単語のレベルが高い!学生によるアニメーションについての論説を読む。
ニューヨーク・タイムズの「学生による論説文コンテスト」の入選作を読んでいます。3回目になります。
今日読むのは、マサチューセッツ州シャロンに住む19歳のシルビア・ウッドバリーさんによるものです。(原文、画像はこちらです。)
早速読んでいきます。
筆者は高校の卒業生ですが、単語のレベルが高いので、ショックを受けるかも。( ´艸`)
The Unlimited Possibilities of Animation
限りないアニメーションの可能性
A scene from the animated film “Coraline.”Credit...Focus Features
アニメ映画『コラライン』のワンシーン
Every fall, graduating students at Gobelins, School of Images, release their animated shorts on YouTube. From “Louise,” a historical vignette (小作品)with the looseness(緩やかさ) of line and bold palette(色幅) of a Toulouse-Lautrec poster, to the richly-detailed fable (寓話)that is “Colza,” these films validate and renew my love for animation.
毎年秋になると、映像学校であるゴブラン校の最終学年の学生たちが短編アニメーションをYouTubeで公開することになっています。トゥールーズ=ロートレックのポスターのようなゆるやかな線と大胆な色幅で描かれた歴史的なヴィニェット(小作品)「ルイーズ(Louise)」から、豊かなディテールで描かれた寓話「コルザ」まで、これらの作品は私のアニメーションへの愛を証明し、新たにしてくれます。
👩「ルイーズ」と「コルザ」の予告編がYou Tubeにあります。
[TAAF2022 短編コンペティション] 菜の花のころ (Colza) 予告編
Yet when I turn my gaze(じっとみること) to American film culture, I find that mainstream animation lacks the creative diversity of these student shorts. In the history of the Academy Awards, only three animated films have been nominated for Best Picture, all of them Disney-Pixar releases; since the introduction of the Best Animated Feature category in 2002, 3-D films intended for children have won 19 times.
The Disney-Pixar sensibility dominates. Smooth, uniform 3-D generates a slightly-exaggerated realism. Plot(筋書き) tends toward the formulaic(典型的): protagonists (主人公)engage with fantastical scenarios just enough to learn a singular life lesson(教訓). Complexity (複雑さ)eludes(逃れる); we may cry or laugh, but we are never truly unnerved (慌てふためく)or challenged.
The films that deviate (逸脱する)from this standard — overwhelmingly produced by indie(自主制作)and international studios — prove that regarding animation as a medium, rather than a genre, expands the ways stories may be told.
しかし、アメリカの映画文化に目を向けると、主流のアニメーションには、これらの学生短編のような創造的な多様性が欠けていることに気づきます。アカデミー賞の歴史上、作品賞にノミネートされたアニメーション映画はわずか3本で、そのすべてがディズニー・ピクサー作品。2002年に長編アニメーション部門が導入されて以来、子供向けの3D映画は19回も受賞しています。
ディズニー・ピクサーの感性は圧倒的なものです。滑らかで均一な3Dがやや誇張されたリアリズムを生み出しています。筋書きは定型的な傾向があります。つまり、主人公たちがファンタジックなシナリオの中で、唯一の人生の教訓を得るといったような傾向です。泣いたり笑ったりすることはあっても、真に狼狽したり苦難に見舞われたりすることはありません。つまり複雑さが妙にないのです。
この標準から逸脱した作品は、圧倒的に自主制作や国際的なスタジオによって制作されたものが多く、アニメーションをジャンルではなくメディアとして捉えることで、物語の語り方が広がることを証明しています。
Consider “Flee(逃げる),” a 2021 animated documentary about a family’s escape from war-torn Afghanistan. In creating remembered landscapes lost to time and destruction, the film carries an elegiac (哀愁を帯びた)weight interwoven with personal grief. One striking scene reduces (凝縮する)the characters to scratchy gray outlines as they flee through Kabul, a visual that captures the stark fear of the characters as well as the obliteration (破壊)of war.
Animation’s capabilities extend beyond the reproduction of live action. An animated feature plays with shape, line, color and perspective(遠近法), infusing(吹き込む)a film with a dual story: that of the world and characters, and that of the art which represents them. The Irish studio Cartoon Saloon imbues (しみこませる)its animation with the flatness and drawn patterns of Celtic artwork, evoking(感じさせる) the elaborate (精巧な)whimsy (斬新性)of an illuminated(色彩豊かな) manuscript (手書きの原画)and underlining the legacy of human creation.
戦争で荒廃したアフガニスタンから脱出した家族を描いた2021年のアニメーション・ドキュメンタリー『Flee』を考えてみましょう。時間と破壊によって失われた思い出の風景を創り出すことで、この映画は個人的な悲しみと一体となった哀愁の重みを帯びています。強烈なシーンのひとつでは、カブールを逃げ惑う登場人物たちを、殴り書きのような灰色の輪郭線に凝縮しており、これは登場人物が感じた暗黒の恐怖と、戦争がもたらす破壊を捉えた映像です。
アニメーションの可能性は、実写の再現にとどまりません。アニメーションは、形、線、色、遠近法を駆使し、ふたつの世界を一つの作品に融合させています。それは登場人物の世界とそれらを作っている芸術の世界の二つです。アイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンは、アニメーションにケルト芸術の平面性と描画パターンを染み込ませ、色とりどりの手書きの原画の精巧な斬新さを感じさせ、人間の創造の遺産を強調しています。
本年度アカデミー賞3部門ノミネート!映画『FLEE フリー』本予告|6.10(金)公開
👩「カートゥーン・サルーン」の作品のランキングの動画があります。
All Cartoon Saloon Movies Ranked
Laika studios’ “Coraline” similarly challenges the accepted formula: surreal(超現実的), feral (とんでもなく)and off-putting(不快感のある), the Claymation acknowledges the ability of children to process and dispel(吹き飛ばす) darkness through their own imaginative powers. “Coraline,” writes A.O. Scott in The New York Times, depicts childhood “as an active, seething(煮えたぎる) state of receptivity(受容性) in which consciousness itself is a site of wondrous, at times unbearable drama.”
Animation’s artistry(芸術性)allows stories to bloom in dynamic ways; whatever may be dreamed, may be created. Limiting animation to formulaic boxes has turned a vibrant garden barren (不毛な)and hostile(受け入れがたい). But the next generation of filmmakers — those impassioned creators who spin such intricate visions within three-minute shorts — may seed new growth if only they have the room and respect to do so.
ライカスタジオの『コラライン』も同様に、既成の形に挑戦しています。超現実的で、とんでもない、不快なクレイメーション(土人形のアニメ)は、子供たちには自らの想像力によって暗闇を処理し、払拭できる能力があることを分かっているのです。A.O.スコットはニューヨーク・タイムズ』紙に、「『コラライン』は、子供時代を 「意識そのものが不思議な、時には耐え難いドラマの場となる、活発で煮えたぎるような受容性の状態 」として描いている」と書いています。
アニメーションの芸術性は、物語をダイナミックに開花させます。それが夢の中であろうと想像の世界であろうと。アニメーションを定型的な枠に閉じ込めてしまったことで、生き生きとした庭が不毛で受け入れ難いものになってしまっていました。しかし、3分間の短編の中で、このような複雑な現状を反転させる熱烈なクリエーターである次世代の映画製作者たちは、新たな成長の種を蒔くことができるかもしれません。そうする余地と敬意の気持ちが彼らにあればですが。
Coraline (2009) Official Trailer - Dakota Fanning, Teri Hatcher Movie HD
👩以下は、参考資料として挙げられているものです。
Works Cited
Aguilar, Carlos. “The Small Irish Animation Studio That Keeps Getting the Oscars’ Attention.” The New York Times, 16 Dec. 2020.
“COLZA — Animated Short Film 2020.” YouTube, uploaded by Gobelins, 1 Oct. 2020.
“How ‘Spider-Verse’ Forced Animation to Evolve.” YouTube, uploaded by Vox, 10 Sept. 2022.
“LOUISE — Animation Short Film 2021 — GOBELINS.” YouTube, uploaded by Gobelins, 17 Nov. 2021.
O’Connell, Mark. “Cartoon Saloon and the New Golden Age of Animation.” The New Yorker, 11 Dec. 2020.
Scott, A. O. “Cornered in a Parallel World.” The New York Times, 5 Feb. 2009.
Scott, A. O. “‘Flee’ Review: From Kabul to Copenhagen.” The New York Times, 2 Dec. 2021.
Vilas-Boas, Eric. “‘It’s Kind of Embarrassing’: Why Animators Are Unhappy With the Oscars.”
日本のアニメーションは世界でも認められている分野です。一方で世界中でアニメーションのレベルがどんどん上がってきているのも感じます。今後は日本の優秀なアニメ制作者たちが、日本でしっかり成長し、素晴らしい作品を作って行けるような支援を大きくしていかなければならないでしょう。
3回に渡って学生の論説コンテストの優秀作品をご紹介しました。1万2千を越える応募の中から、11作品が優秀作品に選ばれています。是非こちらをチェックして、他の作品も読んでみてください。また、生徒に11作品の中から自分が気に入ったものを選ばせて、説明させるという形で授業に取り入れてもいいと思います。
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