Talking New York --- New Yorkで見つけた英語

発見と感動を与えてくれるニューヨークを英語学習に役立つコンテンツにして毎日お届けしています。

ニューヨークで難解なプラークに当たってしまった。

次は、幾何学的なデザインのプラークの中に、
幾何学的なフォームで描かれた英文でした。
どの行も大文字で始まっているのに、最期にピリオドがない。
しかし、一カ所途中にピリオドがある。
全体が二つの文でできているのに、文字の並べ方が変なのです。
そのまま写してみました。



All things are words of some strange tongue, in thrall
To Someone, Something, who both day and night
Proceeds in endless gibberish to write
The history of the world. In that dark scrawl
Rome is set down, and Carthage, I, you, all,
And this my being which escapes me quite,
My anguished life that's cryptic, recondite,
And garbled as the tongues of Babel's fall.
--- Jorge Luis Borges ( 1921 - 1986 ), "Compass";
translated by Richard Wilbur


どうして、こういう並べ方をしたのか・・・?
写しているうちに気付いたのが、各行が韻を踏んでいるということです。
......all
.....night
.....write
.....crawl
.....all
.....quite
.....recondite
.....all
です。
オリジナルはスペイン語でそれを韻を踏むように英訳したのですから、途中で不自然な形で文を切ることになった、というわけです。


そこで、文を次のように書き直してみました。


All things are words of some strange tongue, in thrall to someone, something, who both day and night proceeds in endless gibberish to write the history of the world. 


In that dark scrawl, Rome is set down, and Carthage, I, you, all, and this my being which escapes me quite, my anguished life that's cryptic, recondite, and garbled as the tongues of Babel's fall.


全てのものは奇妙な言語からなる言葉で、人や物の虜になっている。昼も夜も終わることなくグダグダと世界の歴史を綴っているのだ。


あのよく分からない走り書きの中には、ローマ帝国が建設されただの、カタルゴが滅ぼされただの、私がどうした、あなた、全てがこうしたと書かれていて、実際自分の存在自体が自分から離れている。バベルの言語の混乱が降りかかる度に、自分の人生が難解で複雑で訳が分からないものになっていくのだ。



今日のプラークは、ホルヘ・ルイス・ボルへスというアルゼンチンの作家の言葉です。オリジナルはスペイン語で、それをリチャード・ウィルバーという翻訳家が英訳したものです。
なぜこういう文体にしたのか、文法的にも難解で解釈が、それこそ文中にあるように、"cryptic"で"recondite"で"garble”です。
ルイス・ボルヘスは日本で講演も行っていますし、ノーベル賞を「右翼的」という理由でとれなかったという噂もあるくらいの人ですから、このブログでほんの少し彼の文を読んだところですべてを理解できるとは思いません。
Englishラボのアソシエイツと研究してみようと思います。


Englishラボ
MisTy

×

非ログインユーザーとして返信する