ニューヨークの夏の静けさをメトロポリタンダイアリーで読む。
ニューヨークタイムズの『メトロポリタンダイアリー』(Metropolitan Diary)を読んでいると、まるで詩のような美しい文章に出会いました。一文、一文、声に出して選ばれた単語たちを味わいたいような文章なので、ご紹介します。(文中の下線部には、下に解説を入れました。
Summer Quiet
My favorite street in the neighborhood has been under construction (工事中)all year.
近所のお気に入りの通りは年中ずっと工事中。
I still walk it to get to my pottery studio, which is all the way down.
それでも陶芸のアトリエまで歩く。ずっと向こうだけれど。
A block from the East River.
イーストリバーから1ブロック離れたところだ。
I went early this morning and walked back to my apartment before work.
今朝は早起きしてアトリエに行き、仕事の前にアパートに歩いて戻った。
Looking down at my phone, getting a jump on (飛びつく)some emails,
私は携帯に目を落としながら、メールを急いで読んでいた。
I walked right into a tree branch, an arm extended(伸びる) over the sidewalk.
一本の木の枝にまともにぶつかってしまった。歩道に腕の長さほどはみ出していたのだ。
It doused (浴びせた)me in cold water. (I guess it rained last night.) It was like an older brother teaching a lesson: “Look up.”
冷たい水を浴びせられた。(夕べ雨が降ったのだろう。)それはまるで、「前を見ろよ!」と言っている兄のようだった。
A little family in bathing suits must’ve gone for a swim before 9 a.m.
午前9時前、水着を着た小さな子供たちは泳ぎに行っていたたのだろう。
Kids waddling (よたよたと歩く)up the stoop(玄関口の階段).
玄関の階段をよたよたと上る子供たち。
A few stoops down, a babysitter waits patiently at the bottom of the stairs for a little boy with a pool noodle.
数段下の階段では、ベビーシッターがプールの浮き棒を持った小さな男の子を階段の下で辛抱強く見守っている。
It is summer now. I notice how quiet it is.
今は夏。何て静かなんだろうと気付く。
Even the construction is quiet.
工事の音まで静かだ。
Just the rhythmic sound of a shovel in dirt.
ほこりをあげているシャベルの音もリズミカルだ。
A red church door opens, and a man in a baseball cap comes out holding a cup of coffee.
教会の赤いドアが開いている。野球帽をかぶった一人の男性がコーヒーカップを抱えて出てくる。
He breathes in the day.
その日一日を呼吸している。
So do I.
私もそうだ。
Dewy(露に濡れた) sidewalk and summer leaves.
露に濡れた歩道と夏の葉。
Three pigeons lazily walk in an accidental(偶然の) row(列).
偶然に並んでのんびりと歩く3羽の鳩。
I turn the corner onto a busier street.
私は角を曲がり、賑やかな通りへ出る。
A woman is sobbing in a makeshift(間に合わせの)pergola outside a closed bar, a vestige (痕跡)of Covid-19.
一人の助成が閉店したバーの外にある間に合わせのパーゴラ(つる棚)ですすり泣いている。多分その店はコロナで閉店したのだろう。
She is saying “I don’t like to make big decisions under pressure” into a phone.
彼女は電話しながら、「大きな決断をしろってプレッシャーかけないで。」って言っている。
We all pass by on our way to somewhere.
どこかへ行く途中、私たちみんな色々なことを通り過ぎていく。
— Laura Eckes
all year = all (the) year round 年中
walk it ⇒ 話し言葉で、「歩いていく」
a little family = children
So do I. ⇒ 前の文を受けて主語と動詞が倒置しています。
a pool noodle (これにつかまって足をバタバタします。)
👩何気ない一日の描写ですが、静けさの中の音が聞こえ、色々なものが目に入り、様々な暮らしがあり、みんなそれぞれの人生をそれぞれの形で生きている。ニューヨークという大都会の中での一瞬を格調高い詩のように仕上げているのは、やはり単語の選び方と、文法を壊さない技法だと思います。
Englishラボ
MisTy