最近日本のメディア報道がひどいということをよく耳にします。「情報、報道は日本のメディアはかつての輝きを失った」とも言われています。ニュースも選挙もSNSのほうが報道力があるのでしょうか？自らをジャーナリストと主張している人たちが行っていることは本当のジャーナリズムなのでしょうか？

ニューヨークの地元紙である"The City"については、このブログでも何回か取り上げましたが、ついに、日本でも真のジャーナリズムを追及している、渡邊誠氏が編集長である ”Tansa”という非営利団体を見つけました！(３月15日のニューヨーク・タイムズの記事でとりあげています。）日本のジャーナリズムもまだまだ希望が持てる！、「かっこいいジャーナリストを見つけた！」と思わせてくれた記事をご紹介します。

（見出しは、プリント版のものです。）

Striking Out on His Own to Challenge Japan’s Legacy Media

日本のオールドメディアに挑むべく、独力で活動を始める

Makoto Watanabe quit a major newspaper after it retracted（撤回する） a scoop. Now he runs an investigative nonprofit that does not shy away from（～を敬遠する） challenging authority.

スクープを撤回されて大手新聞社を辞めた渡辺周（まこと）氏。現在は、権力に屈することなく、調査報道を行う非営利団体を運営している。

By Martin Fackler

 March 15, 2025

Makoto Watanabe has never forgotten the day when his previous employer, one of Japan’s biggest newspapers,  retreated（後退する） from its biggest investigative scoop about the Fukushima nuclear disaster: that workers had fled the plant against orders from the plant’s manager.

渡辺周（まこと）氏は、前職の日本最大級の新聞社が、福島原発事故に関する最大のスクープを取り消した日を忘れることができない。そのスクープとは、原発作業員が原発所長の命令に背いて退避したというものだった。

It was 11 years ago, and the Asahi Shimbun had come under fire from other media and government supporters, who said the newspaper had misrepresented（事実を捻じ曲げて報道した） what were just garbled（不明瞭な） instructions. After proclaiming that it stood behind the story, the Asahi did an abrupt（突然の） about-face（完全な転換） at a news conference and retracted it.

11年前のことだが、朝日新聞は他のメディアや政府支持者から、原発所長の指示があいまいであったという事実を曲げて伝えたと非難された。 当初朝日新聞は自社の報道（署長の命令に背いて逃げたという報道をしたこと）は間違っていなかったという姿勢を示していたが、記者会見で突然方針を転換し、報道を撤回した。

👩「所長の命令に背いたかどうか」に対しては、「福島原発事故・吉田調書」報道に関する見解 」とした報告書があります。詳しくはこちらへ。https://www.asahi.com/shimbun/3rd/prc20141112.pdf

https://www.gepr.org/contents/20140825-03/

"The newspaper later gutted（骨抜きにする） the investigative group he worked on that produced the article, telling reporters to be less contentious（議論を引き起こす） toward authorities. Mr. Watanabe quit his job at the leading newspaper, a rare move in Japan. But what he did next was more unusual: Mr. Watanabe started Japan’s first media nonprofit dedicated to investigative journalism.

その新聞社は後に、渡辺氏が所属しその記事を書いていた調査報道グループを実質解体し、当局に対しては争いを起こさないよう記者たちに命じた。渡辺氏は、その大手新聞社を辞めた。当時の日本では珍しかった。しかし、彼が次に起こした行動はさらに異例のものだった。渡辺氏は、調査報道に特化した日本初のメディア非営利団体を立ち上げたのだ。

“The newspaper was more interested in protecting its privileged access than informing its readers,” Mr. Watanabe, 50, recalled. “I wanted to make a new media that wouldn’t fold（負けを認める）.”

「その新聞社は、読者に情報をもたらすことより、（情報源への）特権的接近手段を守りたかったのです。」と、50歳の渡辺氏は振り返った。「私は、屈しない新しいメディアを作りたかったのです。」

Eight years later, his Tokyo Investigative Newsroom Tansa remains small. As the editor in chief, he supervises a staff of two full-time reporters, a volunteer and an intern. On a recent afternoon, they worked in a spartan（質素な） room with two small tables and bookshelves on the second floor of a nondescript（何の変哲もない） Tokyo office building.

それから8年が経った今でも、彼の東京調査報道室（Tansa）は小規模のままだ。編集長である彼は、2名の常勤記者、ボランティア1名、インターン1名からなるスタッフをまとめている。最近のある午後、彼らは東京の目立たないオフィスビルの2階にある、2つの小さなテーブルと本棚がある質素な部屋で働いていた。

But Tansa, which roughly translates as “in-depth investigation,” is finally making a mark. It published a series of articles from 2018 to 2021 that exposed decades of forced sterilizations（不妊手術）of mentally disabled people, forcing the government to last year issue an apology and pass a law to pay compensation to the victims. Japan’s public broadcaster, NHK, signed a deal to use some of Tansa’s content.

しかし、「徹底調査」を意味する「タンサ(Tansa)」は、ようやく影響力を持ちつつある。

2018年から2021年にかけて、知的障害者の強制不妊手術が数十年にわたって行われていたことを暴露する一連の記事を掲載し、政府に昨年、謝罪と被害者への補償金を支払う法律の制定を余儀なくさせた。日本の公共放送局であるNHKは、タンサのコンテンツの一部を使用する契約を結んだ。

The nonprofit, which had a 2024 budget of 60 million yen, or about $400,000, is funded entirely by donations and private grants, and it has seen a steady increase in the number of readers supporting it with monthly contributions. Mr. Watanabe plans to hire two new journalists this spring, including one from another big newspaper.

2024年度の予算が6000万円（約40万ドル）のこの非営利団体は、寄付金と民間助成金によって運営されており、毎月寄付を行うサポーターも着実に増えている。渡辺氏は今春、別の大手新聞社からの1名を含む2名のジャーナリストを新たに雇用する予定である。

👩”Tansa”と渡邊周氏について、３日続いて取り上げます。続きは明日・・・

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