廃墟となった伝染病患者のための病院が国連本部の近くにあった！

2022/08/12 18:00

コロナウィルスが世界中にこれほど大きな影響を及ぼすとは、当初考えもしませんでしたが、人類はウィルスと闘って来た歴史があります。そしてその痕跡は、廃墟となった建物に残されています。先日はエリス島の隔離病棟のことを載せましたが、今日はルーズベルト島の廃墟となった病院をご紹介します。

ルーズベルト島というのは、ニューヨーク市のマンハッタン区とクィーンズ区の間のイーストリバーの中にある細長い島です。下の写真の吹き出しの先のあたりに、今日の話題の病院跡があります。

原文、画像はこちらです。⇓
Roosevelt Island Smallpox Hospital Ruins – New York, New York - Atlas Obscura

Roosevelt Island Smallpox Hospital Ruins
ルーズベルト島天然痘病院跡
A crumbling hospital from the 1850s on Roosevelt Island.
ルーズベルト島にある1850年代の崩れかけた病院。

The bubonic plague certainly wins for its baroque presentation. Malaria and HIV are concurrent with our times and thus feel more real. But smallpox takes the contamination cake. It has been around for more than 3,000 years in all parts of the world.

ペストは、バロック時代の劇的な迫力の存在感で、確かに他のものを圧倒します。マラリアやHIVは現在も存在しているので、よりリアル感があります。しかし、なんといっても天然痘が一番やっかいな伝染病です。天然痘は3,000年以上前から世界のあらゆる地域で発生しているのです。

Before the vaccine was discovered in 1796, more than 400,000 people a year died from smallpox in Europe alone. According to the World Health Organization, smallpox killed one in ten children in Sweden and France and one in seven in Russia.

1796年にワクチンが発見される以前は、ヨーロッパだけでも年間40万人以上が天然痘で亡くなっていました。W.H.O.(世界保健機構)によると、スウェーデンとフランスでは子供の10人に1人、ロシアでは7人に1人が天然痘で亡くなっているそうです。

The disease killed Louis XV of France and other European monarchs. Queen Elizabeth I had the disease as a child and wore heavy make-up to conceal her pockmarks. In the French and Indian Wars, blankets containing smallpox were purposefully given to Delaware Amerindians, in an early instance of biological warfare. Through extensive worldwide vaccination efforts, the disease was eradicated in 1979 - the only disease to be completely eradicated through human intervention.

フランスのルイ15世をはじめ、ヨーロッパの君主たちもこの病気で命を落としました。エリザベス1世は幼少時に罹患し、発疹の跡を隠すために厚化粧をしました。フレンチ・アンド・インディアン戦争では、天然痘のウィルスが付いた毛布がデラウェア州のアメリカ先住民に故意に配られ、初期の生物兵器として使用されました。世界的なワクチン接種の努力により、この病気は1979年に根絶されました。天然痘は、人間の手によって完全に根絶された唯一の病気です。

By the end of the 1800s, efforts were made in Western Europe and the United States to eradicate the disease by universal vaccination. But before that time, many cities built hospitals specifically for treating smallpox sufferers.

1800年代末になって、西欧や米国では、全国民へのワクチン接種によってこの病気を根絶しようとする努力が行われました。しかしそれ以前は多くの都市で天然痘患者の治療に特化した病院が建設されました。

In New York City, the southern tip of Blackwell’s Island (now Roosevelt Island) provided ferry access but kept the infected patients far away from the population. Better known for Grace Church on Broadway and St. Patrick’s Cathedral on Madison Avenue, James Renwick Jr. designed the smallpox hospital in his Gothic Revival style.

ニューヨークでは、フェリーでアクセスできるブラックウェルズ島（現在のルーズベルト島）の南端に（病院を建設して）感染した患者を隔離し、市民から遠ざけることができました。ブロードウェイのグレース教会やマディソンアベニューのセント・パトリック大聖堂で知られるジェームズ・レンウィック・ジュニアが、ゴシック・リバイバル様式でこの天然痘病院を設計しました。

From 1856 until 1875, the hospital treated about 7,000 patients a year. In 1875, the building was converted into a nurses’ dormitory, and the city smallpox hospital was moved to North Brothers Island, in part because Blackwell’s Island had become more densely populated. By the 1950s, Renwick Hospital had become useless and was abandoned by the city, quickly falling into disrepair.

1856年から1875年まで、この病院は年間約7,000人の患者を治療しました。1875年、建物は看護婦寮に改築されました。ブラックウェルズ島の人口が増えたこともあり、市の天然痘病院はノースブラザーズ島に移されました。1950年代になると、レンウィックが設計した病院は用済みとなり、市から放棄され、急速に荒廃していったのです。

However, in 1975, the Landmarks Preservation Commission took interest in the dilapidated structure and declared it, in its ruin, a city landmark. They reinforced the walls to prevent it from completely falling apart but have not renovated it or opened it for tours. Only some of the outer walls and the foundation remain today.

しかし、1975年、歴史的建造物保存委員会がこの老朽化した建物に関心を持ち、廃墟のまま市の歴史的建造物としました。完全に崩壊しないように壁を補強したのですが、改修や見学のための公開はしていません。現在は外壁の一部と土台が残っているだけです。

Google Earthで全体像を確認してみました。