歌詞を分析させる。言語と歴史、社会について考えさせる。自分で作らせる。
今年はニューヨークでヒップホップが誕生して50周年を迎えます。それを記念してアダムズ市長はニューヨーク市の5つのブロックで様々なイベントを主催しました。
ニューヨークの学校では、先生たちがヒップホップとニューヨークの関係を授業の中で取り入れる工夫をしています。(ニューヨーク・タイムズではヒップホップを授業でとりあげた先生たちのレッスンプランをメールで募集しています。)
今日はニューヨーク・タイムズが考えたレッスンプランの2回目です。
原文、画像はこちらからです。
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3. Explore the lyrics.
歌詞を深く探ろう。
Kendrick Lamar performing at the Glastonbury Festival in 2022.Credit...Scott Garfitt/Associated Press
2022年、グラストンベリー・フェスティバルでパフォーマンスするケンドリック・ラマー。
Rap music, at its core, has been a 50-year love affair with the English language. The way artists rhyme and flow language inspires us to dance, think, flirt, grieve and laugh.
ラップ・ミュージックの核心は、50年にわたる英語への愛です。アーティストが韻を踏み、言葉を流す様子は、私たちにダンス、思考、気まぐれ、悲しみ、笑いの気分をもたらしてくれます。
To celebrate hip-hop’s birthday, The Times asked Mahogany L. Browne, Lincoln Center’s first poet-in-residence and an acclaimed author, to write a love letter to the genre, composed entirely of lyrics both beloved and obscure, with a little remixing.
ヒップホップの誕生日を祝って、ニューヨーク・タイムズはリンカーン・センター初の招聘詩人で、高い評価を受けている作家でもあるマホガニー・L・ブラウンに、このジャンルへのラブレター(ともいうべきもの)を書いてもらいました。よく知られている歌詞もありますが、ほとんど知られていない歌詞もあり、それらが少しずつ混じり合ってひとつの詩の様になっています。
Mahogany L. Browne (こちらより)
Students can hover over a lyric to listen to the songs Ms. Browne sampled, or to learn more about them. Students can also hear the author read her piece all the way through.
生徒たちが、歌詞の上にカーソルを置くと、ブラウンさんがサンプリングした曲を聴いたり、その曲について詳しく知ることができます。また、生徒たちは、彼女自身が作品を読むのを最後まで聞くこともできます。
それぞれに次のようなタイトルが付けられています。
Up in the Club クラブに行って
Welcome to My House Party お家パーティーへようこそ
Intergalactic 銀河系間で
Flow Futuristic 未来的気分にのって
Been Around the World 世界中で
Love’s Gonna Get You 愛の虜
Head Sprung 源泉
I’m Slipping スリップする
Sunday Candy 日曜日はキャンディ
この中から、"Love's gonna get you"を選んで日本語にしてみました。
(様々なラップの歌詞の一部を合成したものなので、少々不自然に感じるところがあるかもしれません。--- MisTy)
Love’s Gonna Get You
愛の罠にはまる
If I didn’t ride blade on curb, would you still (love me)? If I made up my mind at work, would you still (love me)? Keep it a hundred, I’d rather you trust me than to (love me).
高級車に乗れるくらい金持ちでなくても、愛してくれるかい?仕事で出世しなくても、愛してくれるかい?確実なことを言ってほしい。愛してというより信じてほしいから。
I got love for the game, but I’m not in love with all of it. Could do without the fame, and rappers nowadays are comedy. The hootin’ and the hollerin’, back and forth with the arguing.
遊ぶのは好きだけど、その全てが好きというわけじゃない。名声は得られなくても何とかなるだろうが、今のラッパーはコメディーだ。笑ったり、叫んだり、行ったり来たりしながら何かを意見してる。
I can feel it inside; I can’t explain how it feels.
分かる気がするけど、どんな感じかは説明できない。
I’m lookin’ at the front door.
入り口のドアを見ているんだ。
All I know is that I’ll never dish another raw deal.
分かっているのは、もう二度とひどい扱いの話には乗らないということだけ。
I need gratitude. I’m on a different latitude.
感謝の気持ちが欲しいんだ。自分は緯度が違う場所にいる。
They say the loudest in the room is weak. That’s what they assume, but I disagree. I say the loudest in the room is prolly the loneliest one in the room. (That’s me.)
小さな部屋中で大きな声をだすヤツは弱いって、世間では思われてるみたいだけど、違うと思う。この部屋で一番声が大きいのは、たぶん一番孤独な奴だと思う。それが自分。
After students have interacted with the piece, ask them to analyze and reflect on Ms. Browne’s lyrical remix: What’s your favorite lyric in the track, and why? Which lyric do you think best captures the spirit of hip-hop? What does Ms. Browne’s homage reveal about the art and poetry of hip-hop?
生徒たちが作品に触れた後、ブラウンさんの再編集した歌詞について分析させ、考えさせてみましょう。 この曲の中で一番好きな歌詞は何ですか?そして何故?どの歌詞がヒップホップの精神を最もよくとらえていると思いますか?ブラウンさんのヒップホップに対するオマージュは、芸術とヒップホップの詩について何を表していますか?
Students can then consider this statement by Veronica Chambers, the lead editor on Ms. Browne’s piece: “Rap music, at its core, has been a 50-year love affair with the English language.” Do they agree? In what ways does hip-hop make you understand, appreciate and connect more deeply to the English language?
次に、生徒たちにブラウンさんの作品の編集責任者であるヴェロニカ・チェンバースの意見を読ませます。それは次のようなものです。「ラップ・ミュージックは、その核心において、英語という言語との50年にわたる深い関係にありました。」生徒たちはこのことをどう思いますか?ヒップホップは、どのような点で人に理解され、受け入れられ、英語という言語とさらに深く結びついているのでしょう?
Finally, ask students to create a “cento” poem — a piece composed of lines from different works — made of lyrics from hip-hop songs, using Ms. Browne’s remix as a model. Have your students explain which song lyrics they used and why. What message do they want to convey with their new creative work?
最後に、生徒たちに、ブラウンさんの詞を手本に、ヒップホップの曲の歌詞を使った「チェント」(異なる作品からの行で構成された作品)を作ってもらいます。生徒たちに、どの曲の歌詞を使ったか、なぜその言葉を使ったかを説明させましょう。新しい創造的な作品で、生徒たちはどのようなメッセージを伝えたいのでしょうか?
Students can read an interview with Ms. Browne in which she explains the goals for her remix poem, how she chose the lyrics she incorporated, and what hip-hop means to her. They can also refer to these instructions on creating a cento poem.
生徒たちは、ブラウンさんが、自分の歌詞のめざすもの、取り入れた歌詞の選び方、ブラウンさんにとってヒップホップとは何かについて説明している、彼女のインタビューを読むことができます。また、セントポエムの作り方を参照することもできます。
4. Examine how hip-hop has transformed the way the world speaks.
ヒップホップが世界の話し方をどのように変えたかを検証します。
Hip-hop, through its wordplay, wit and ingenuity, has helped to transform language over the past 50 years, bringing the Black vernacular’s vibrancy to the world.
ヒップホップは、その言葉遊び、ウィット、創意工夫を通して、過去50年にわたり言語の変革を助け、活気のあるブラックの人々特有の言語の響きを世界にもたらしました。
In “How Hip-Hop Changed the English Language Forever,” Miles Marshall Lewis unpacks five words to demonstrate rap’s unique linguistic influence. Here, using songs by Spoonie Gee, Lil Wayne and others, Mr. Marshall Lewis traces the way a new meaning for “dope” moved from rap records to common lexicon:
マイルズ・マーシャル・ルイスは『ヒップホップはいかにして英語を永遠に変えたか』という著書の中で、5つの単語を紐解き、ラップのユニークな言語的影響力を論証しています。この中で彼は、スプーニー・ジー、リル・ウェインらの曲を使い、"dope"「ドープ」の新しい意味がラップレコードから一般的な語彙へと移り変わっていく過程をたどっています。
Consider “dope,” which apparently originated in the 19th century from the Dutch doop, which means “dipping sauce.” In 1909, “dope” was employed to describe the “thick treacle-like preparation used in opium smoking,” per the Oxford English Dictionary. But “dope” also had another meaning: a stupid person. In the wider culture, stereotypes of Black people as being unintelligent still endured, so it was an act of radical reclamation when, in the 1980s, rappers began to use “dope” to refer to superlative music, lyrics, fashion or anything else considered praiseworthy.
19世紀にオランダ語で 「ディッピング・ソース 」を意味する"doop"に由来するらしい "dope "について考えてみましょう。1909年、"dope "はオックスフォード英語辞典によれば、「アヘン喫煙に使われる濃厚な糖蜜状の調製物」を表すのに使われました。しかし、"dope "には「おろかな人」という別の意味もありました。黒人文化以外のまわりの文化では、黒人は知性がないという固定観念がまだ根強く残っていたため、1980年代にラッパーたちが「dope」を最高の音楽、歌詞、ファッション、その他賞賛に値するとされるものを指すのに使い始めたのは、ラディカルな改変行為でした。
Hip-hop made “dope” — and also the genre at large — the arbiter of cool. And unlike similar inversions like “sick” or “bomb,” its pop-cultural usage as a synonym for “outstanding” persists into the present day.
ヒップホップにより 「ドープ」、そしてこのジャンル全体が 、「かっこいい」ものになりました。そして、"sick"や"bomb"の意味が反転したのとは異なった形で、「卓越した」という意味をもつポップカルチャー的用法は現在に至っています。
Have students read Mr. Marshall Lewis’s interactive and ask them to reflect on the many ways hip-hop has shaped how they communicate: How has it affected how you and your peers speak? Are there words and slang you regularly use that come from rap and hip-hop culture?
生徒にマーシャル・ルイス氏との対話を読ませ、ヒップホップが自分たちのコミュニケーションを形作ってきたさまざまな過程を考えさせましょう。つまり、 ヒップホップは、あなたやあなたの仲間の話し方にどのような影響を与えましたか?とか、ラップやヒップホップ文化に由来し、普段使っている言葉やスラングがありますか?といった質問をします。
Then, invite students to analyze a word or phrase popularized through rap and hip-hop, using Mr. Marshall Lewis’s piece as a model.
次に、マーシャル・ルイス氏の作品を手本に、ラップやヒップホップを通して広まった言葉やフレーズを分析するよう生徒に勧めてみましょう。
こうした授業は、単に「英語」(アメリカ人にとっては「国語」)の授業にとどまらず、現在の社会のあり方を考えさせ、そして分析方法を学ぶことができます。
日本でこうした授業が可能でしょうか?(ラップを歌舞伎や能に置き替えて考えるといいと思います。)
多分、日本の先生からは、準備する時間と余裕がない、評価が難しい、テストができない、教科書が進まないという意見が出ると思います。そして、保護者からは入試対策をしていないと苦情が来るかも分かりません。(´;ω;`)
Englishラボ
MisTy